地雷原の中で汚いアガリをどれだけ拾えるかの勝負
卓のレベルが高まるにつれ、全員の押し引きや読みは正確さを増していきます。
「メンタンピン三色」
「メンピンイーペードラ」
などを筆頭に、いわゆる綺麗な手で両面をアガる というのが卓のレベルが高くなるほど難しくなっていきます。
綺麗な手はアガれれば気持ちいいですが、そんな手はほとんどの場合誰でもアガれるわけで、そういったところでは差がつきません。
差が付くのは、汚いアガリ、
鳴き三色、鳴きイッツー、役牌バック、チャンタ、遠い食いタン、回し打った末の出来合いカンチャンや単騎など、
ギリギリのアガリたちです。
ポーカーでいうなら、ブタやワンペアの手で勝ちをもぎ取るようなものです。
普通はオリに回るような手で、いかに、1000点や2000点をもぎ取るか?
いかに場をかく乱し、他家の読みを混乱させ、判断を誤らせ、放銃に誘い込み、または降ろし、1000点や聴牌料をもぎ取れるか?
特に、鳳凰卓の東風戦ともなると、1000点の差や席順の差で順位が決まることも多く、
ほとんど全員がそれを熟知しているため、
卓はまさに「地雷原」という言葉がふさわしい状態となります。
全員が鳴き散らかして、何をしているか分からないような捨て牌で
しぶとく回しながら聴牌を狙ってくる複雑な場においては、
簡単なことのように言われている、
「他家の聴牌気配を見極めて、自分の待ちと打点を考慮して押し引きする」
ということさえ、困難になります。
危険牌を切らないようにしながら、聴牌とノーテンを繰り返し、
隙あらばゾンビのように復活してくるのです。
鳳東卓はいつもこんな感じです。
自分の手がまとまる頃には、他家の1人か2人には手が入っているのです。
この状況で誰が聴牌気配で、誰に何が危ないか、
そしてこの点数状況でどうするのが最適か、すぐに答えられますか?
これだけ複雑な状況ですから、すぐに分かるわけがないのです。
しかも、これは3人がほぼ同時にフーロを入れてこうなっていますから、
実戦の数秒ではどれだけ難しいかは言うまでもないでしょう。
気持よくまっすぐ手を作って両面リーチ!
贅沢な複合系から最高形を作ってリーチ!
なんていうことはほとんどできません。
現実はマンガではないのです。
自分ばかりにいい手は来ませんし、
モブキャラや脇役などおらず、
全員が自分と同等以上の実力者なのですから。
ちなみに、先ほどの手を開けるとこんな感じです。
対面が聴牌、下家が今テン、上家がイーシャンテンです。
打点は自分が一番とはいえ、この地雷原のような中で放銃せずにアガリを取るのは
とても難しいことです。
少しでも読みの精度が高くなるように常に全員の動向を注視し、
通りそうな牌を見つけ、最高形を崩してでも、どんな汚い手格好になっても、
しぶとく生き残り、アガリを拾う。
一牌一牌、引くたびに、他家から出るたびに、判断していかなければいけないのです。
正解の道は局の中で何度も変わります。
先ほどまで通せなかった牌が通った、
他家がオリているのに気付いた、
最終手出しにより、想定されていた待ちの可能性が消えた、
他家の安牌手出しの瞬間ならこの牌は通せそう、
などなど。
教科書には載っていない、体系化が難しい場面はまだまだたくさんあります。
強者にも「牌効率やベタオリや基本」を強調する人がたくさんいますが、
私の経験上、それらだけでは、安定七段が精一杯だと思います。
それ以上の強さを持っている人は、(本人にも自覚がないかもしれませんが)
こういう地雷原のような場での、判断の正確さの積み重ねが
戦績にかなり影響しているように思えます。